・戻る |
このページにはまだ図面の張り付けが済んでいません。 あしからず |
#221 NJM2073 BTLアンプ
3V位の電圧でスピーカを鳴らしたいということがあります。 しかし、こんなに低い電圧で、しかも、
トランスを使わないで大きな音を鳴らす事はなかなかできる事ではありません。
しかし、世の中は進歩しました。そんな要求に応えてくれるICがあるのです。 ここで紹介するNJM-2073です。 このICは、2Vの電源で
80mW、3Vの電源で 300mWものパワーを取り出せるのです。
このICの内部構造は、第1図に示すようにちょっと複雑ではありますが、基本的には二つのアンプから成り立っています。
アンプが二つ入っていると言う事からまず、「ステレオアンプ」が頭に浮かぶと思います。もちろん、このICでステレオアンプを作る事はできるのですが、
今日はより大きな出力の取れるBTLアンプに付いてお話したいと思います。
BTLという言葉は初耳という方も多いと思いますからまずその方から説明したいと思います。
BTL はBridge (Output)Tranceformer Less
(Amp.)の略で、ブリッジ化した出力トランスレスアンプという意味です。
第2図を御覧ください。
この回路には入力トランスはなく、入ってきた信号は「非反転アンプ」と「反転アンプ」に同時に入力されます。
二つのアンプの出力は互いに逆位相ですから、その間にスピーカをいれれば二倍の出力電圧が得られるはずです。 したがって出力トランスもありません。
これがBTLアンプです。
このBTLにはまた、手品の種がかくされています。 それは出力が、電力換算で2倍ではなく4倍になると言う事です。
「アンプを2台使うだけで、出力が4倍になる」なんて、こんなに素晴らしい話を聞いた事がありますか。
電力Pは P=E*E/R で計算しますが、Eが二倍になると P=2E*2E/R となり、結局4倍になるのです。
「エーッ?」と、まだ半信半疑の方もいらっしゃると思いますがここのところはよく理解して置いてください。 非反転アンプと反転アンプは、オペアンプの
勉強をされた方ならもうお分かりのことと思います。
NJM2073には二つのアンプか入っていると先ほどのべました。そして、この二つのアンプはオペアンプと同じように非反転アンプ、反転アンプの使い分
けが自由にできるのです。 具体的には第3図に示す回路でBTLアンプとなります。
NJM2073には3種類のタイプがありますが、このキットでここでは第4図に示す、通称DIPタイ
プを使いました。
第5図に製作のための実体図を示します。
ちょっと細かいですから、ショートやブリッジを起こさないように気をつけて製作して下さい。
NJM2073は使いにくいという方がいらっしゃいますが、その訳は増幅率が高いからだと思います。
NJM2073の増幅率は44dBあります。160倍ですね。
LM386の増幅率が40dB、つまり100倍ですからそれより高いことになります。
出力を1Vとすると、入力は6.25mVと言うことになります。これはコンデンサマイクの出力クラスの電圧ですから、(事実、コンデンサマイクをつなげ
ばスピーカがなります)このアンプの前に置く回路の出力が大きすぎるとモーターボーティングを起したり、発振したりしやすいのです。
しかし、これを欠点と見るのは間違っていると思います。
増幅率が高いと言う事は、低周波段のアンプを一段減らす事ができますし、また、増幅率そのものを低減する方法もあるのですから、むしろ使いやすいと感じ
るべきだと思います。
第6図にBTLの増幅率を30dB(約30倍)に落とす回路を示します。
確かに第3図の回路と比べると複雑ですから「使いにくい」という事も言えるのですが、何もカタログに
載っているこの方法だけがゲインを落とすほう方ではありません。
少々の入力オーバーなら、入力回路のボリュームでコントロールもできますが、それでも入力がオーバーするようなら奥の手を考えましょう。
一番簡単な方法は、このアンプの前にある前段部を取り去ってしまうことです。これは実に簡単な、そして確実な方法です。しかし、この方法が使えないとし
たら次の方法を考えてみなければなりませんね。
第4図の回路では入力のボリュームが10kΩになっていますが、これに第7-a図に示すように1kΩのの抵抗をパラレルにいれてみます。こうすることに
よって、回路のインピーダンスが下がり、それによって入力信号の電圧そのものを低下させることができます。 これは、前段のインピーダンスが高いほど利き
目のある方法です。 また、第7-b図のように、ボリュームの出力とアースの間に1kΩ程度の抵抗をいれる方法もあります。
ご自分の都合のよい方法を探してみてください。
電圧のレベルを考える際、インピーダンスも考慮に入れることによって、より自由にコントロールする事
が出来る事を記憶しておきましょう。
電源は2Vから15V迄使えますが、ハムのない、インピーダンスの低い電源を使用して下さい。 電池を使うのが一番確実な方法です。
最後にこのICの良いところをPRしておきましょう。
それは、ノイズが非常に小さいという事です。
もともと、ヘッドホン出力用としても考えられていますから、LM386と比べるとかなりローノイズです。
また、周波数特性は、数kHzの付近に若干の高い部分がありましたが60Hzから12,000Hzあたりまで、広い高原状の出力特性が得られました。
これらが電源電圧3Vで働くのですから大した物です。 前段とのインターフェースに気を配ることによって、低電圧で働く受信機用のAFアンプとして、か
なり高品位な物が期待できると思います。
<第1図>NJM2073の内部構造(JRCのカタログから)
<第2図>BTL回路の構成
<第3図>BTL回路の実際
<第4図>DIPタイプのNJM2073D
<第5図>FCZ基板に組み上げる
<第6図>ゲインの落とし方(JRCのカタロクから)
<第7図>インピーダンスを下げる